• 中国の電池メーカーがEV用電池市場のほぼ2/3を占めている。
  • TeslaBYDVolkswagen2023年上半期のEV用電池のほぼ45%を消費した。
  • 2030年には年間のEV用電池の需要は4TWhに達するとみられる。

 

Counterpointが提供するGlobal EV Battery Trackerの最新調査によれば、世界中で販売されたEV用電池の総容量は2023年上半期に前年同期比54%伸びて、300GWhに達した。同じ期間に、世界のEV販売も、前年同期比43%とかなりの伸びをみせた。CATLがEV用電池市場をリードし、やや水をあけられているものの、BYDとLG Energy Solutionsがこれを追う。このトップ3社を合わせると、2023年上半期の市場のほぼ2/3を占める。また、EV用電池を使用する(車両に載せる)という視点では、主要地域は中国米国、欧州である。

 

市場動向について、シニアアナリストのSoumen Mandalは以下のように述べた。

「EV用電池のエコシステムは急速に変容している。今後の数年間で、数多くの新興メーカー、たとえばACCVerkorNorthvoltE4Vといったメーカーが電池のサプライチェインの中でしっかりした地位を獲得するだろう。また、電池専業メーカーとは別に、TeslaVolkswagenBMWMercedes-BenzStellantisなどの完成車メーカーも自社での電池セルや電池パックの製造に動いており、電池サプライチェインにおける競争はさらに激しくなる。」

 

Mandal氏はさらに、以下のように続けた。

「今のところ、中国と韓国のサプライやが市場を寡占している。中国のCATLBYDCALBGotionSunwodaFarasisなどは、合わせて市場の2/3を占め、また韓国の主要3社であるLG Energy SolutionSamsung SDISK Innovationは、合わせて25%のシェアをもっている。EV販売が世界各地で勢いづくと、各国は自国内での電池サプライチェインの構築、つまり地産地消を目指すようになる。これによって、地場のメーカーが活気づくとともに、競争激化によって退場を余儀なくされるメーカーも出てくるだろう。」

 

 

完成車メーカーのTeslaBYDVolkswagenは、合わせて、2023年上半期に販売されたEV用電池の総容量の45%を使用して車を製造した。それが電池メーカーの成長につながっている。まずTeslaのModel 3とModel Yが良く売れたことが、CATLとLG Energy Solutionsの成長に決定的な役割を果たした。CATLはTeslaの上海工場で生産するModel 3とModel Yの標準バージョンに電池を供給しており、また、LG Energy Solutionsはハイグレード電池のメーカーとして、Model 3とModel Yの高性能バージョンに電池を供給している。ほかにも、HyundaiKiaFordのEVのおかげでSK Innovationの市場シェアが伸びた。RivianとBMWはSamsung SDIの電池を頼って車を生産している。北米ではPanasonicがTeslaの各車種への主供給元となっている。

 

 

市場の今後の見通しについて、リサーチバイスプレジデントのPeter Richardsonは以下のように述べた。

「2023年上半期にEVが搭載した電池容量の平均は50kWhであった。小型車、コンパクト車、ミニのEVが増えており、特に中国でそれが顕著だ。だから電池容量の平均は、増えたとしても2030年で65kWhから70kWhになるだろう。それでも、この数字によれば2030年にEVが産み出す電池の需要は4TWhに達することになる。」

 

さらにRichardson氏は以下のように続けた。

「電池の需要が増し、地政学的な緊張とあいまって、EV用電池の主要原料であるリチウムの価格に上昇圧力が強まっている。このため電池メーカー各社は、ナトリウムイオンなど代替化学物質を探している。それによって電池コストを抑え、EVを買いやすくするためである。CATLはすでにナトリウムイオン電池でブレークスルーを達成しており、間もなく量産規模で採用される見通しである。ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と比べてエネルギー密度が低いので、高性能EV車種には向かない。そのため、ナトリウムイオン電池は電動バイクや電動三輪車、それに小型乗用車で主に採用されるだろう。CheryがiCarブランドの車種に、2024年の早期にCATL製のナトリウムイオン電池を搭載するとみられる。その一方で、全固体電池は未だ研究開発段階で、実用化にはまだしばらくかかりそうである。安価な全固体電池の実現は今後の大きな課題である。」

 

*EVとしてはBEV(バッテリー駆動電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド自動車)を対象とし、ハイブリッド自動車と燃料電池車(FCV)はこの調査には含めていない。

 

 

Team Counterpoint

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