カウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(英文名:Counterpoint Research HK、以下カウンターポイント社)は、世界の自動車向け車載コネクティビティモジュールのチップセット市場が2020年から2030年の10年間にCAGR 13%で成長し、この間のNADモジュール(車載テレマティクス装置においてセルラー接続を担うモジュール)の出荷は7億台を超える、とする調査結果を含むGlobal Automotive NAD Module and Chipset Forecastを発表いたしました。

 

コネクテッドな車両の今後の伸びについてリサーチアナリストのSubhadip Roy氏は次のように述べています。

「今やAutomotive 2.0というべき時代に入った。それを特徴づけるのはパワートレインの変化(電動化)、安全性向上と移動手段普遍化(自律・自動化)、コックピットやインフォテイメント(デジタル化)である。いずれも、先進的なコネクティビティによるソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV;エンジン制御から車内エンタテイメントに至るまで、機能をソフトウェア的に実現し、ソフトウェアのアップデートにより機能を向上させられる車)によって実現されるものだ。5G接続が提供する高いバンド幅、容量、低遅延によって、例えばリアルタイム電池マネジメントシステム(BMS)や、カーナビと連動し位置情報を活用した多様なサービス、あるいはストリーミングといった機能が実現できる。5GはAutomotive 2.0への変革の触媒なのだ。加えて、低遅延のC-V2X(Cellular Vehicle to Everything; セルラー通信を用いた車同士、車と道路などのインフラや歩行者など、周囲のさまざまなものとの通信)によって、データやセンサー情報に支援された自動運転の道も開ける。」

 

Roy氏はさらに以下のように続けています。

「今のところ、NADモジュール市場では4G Cat 4が主流で、今のところ車メーカーのテレマティックアプリケーションの要求速度を満たしている。しかし次世代SDVの必要性が増すなかで、L3+ ADAS/ADS車両では5Gが主流になるだろう。また、L2 ADAS車両や、さらに要求水準が低い車両テレマティクスや簡易なストリーミングを装備する程度のコネクテッドカーでは、従来の4G Cat 4に代わって5G RedCap(5G Reduced Capability; 帯域・アンテナ数などに制約を設けるかわりに低コストと低消費電力を実現した規格)が、それぞれ主流になるだろう。」

出典:Global Automotive NAD Module and Chipset Forecast

 

各地域でのSDV普及の動向について、シニアアナリストのParv Sharma氏は次のようにコメントしています。

「中国がSDV時代の先頭を走っている。電動化やデジタル化したコックピットはもちろん、たいていの新車には何らかの自動運転機能が搭載されている。中国における普及とその規模は、中国だけでなく、自動車業界のバリューチェイン全体にとってもメリットになる。例えば、2023年におけるNADモジュール出荷のほぼ1/3が中国仕向けで、同国に出荷された車の10台に8台はコネクテッドだった。この調子でいけば、2028年には乗用車の100%がコネクテッドになる。中国は5Gの採用でもリードしている。同国で2024年第1四半期に出荷されたNADモジュールの20%は5G対応品であった。一方、中国の外に目を向けると、セルラー接続NADモジュールの普及率は2023年に66%であった。この数字は今後伸びていくだろう。」

 

主要メーカーの動向について、Sharma氏は次のようにコメントを加えました。

「Qualcommが車載コネクティビティチップセット市場をリードしており、2030年までその地位を守るだろう。同社は中国でも他国でも評判が良い。MediaTekはシェアを拡大し第2位につけたが、なおQualcommとの差は大きい。同社はDimensity Autoチップセットと自動車向け5G RedCapの売上を伸ばし、さらにシェアを伸ばしそうだ。中国のチップセットメーカー、HiSilicon、UNISOC、ZTE、ASRなどは、国内でのNADモジュールやTCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)のメーカーとの提携に加えて新興国市場での事業拡大もあって、安定した成長をみせている。一方、NADモジュールメーカー間の競争も、ここ数年の事業統合を経て形がみえてきた。Quectel、Rolling Wireless(同社を完全に買収したFibocom-Favalonを含む)、LGの3社はNADモジュール界の王者としてのシェアを誇る一方で、Continental、Harman、WNC、AM Teleconなどは特定地域向けにパートナーを選んで提携する戦略で堅実に伸びていくだろう。」

 

 

【カウンターポイント社概要】

カウンターポイント社(英文名Counterpoint Research HK)はTMT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化した国際的な調査会社である。主要なテクノロジー企業や金融系の会社に、月報、個別プロジェクト、およびモバイルとハイテク市場についての詳細な分析を提供している。主なアナリストは業界のエキスパートで、平均13年以上の経験をハイテク業界で積んでいる。

公式ウェブサイト: https://www.counterpointresearch.com/