- Intelが2023年の売上首位を奪還した。メモリーの低迷をうけてSamsungの業績が落ちた結果である。
- NVIDIAはAIへの投資が実を結び、2023年の売上はほぼ倍増して、第3位となった。
- 2023年に最も厳しかったのはメモリーセクターであった。需要が弱いうえに在庫超過も重なった。
- 人工知能とメモリーの回復が、2024年の売上のドライバーとなるだろう。
Counterpoint Researchによる暫定集計値と予測とによれば、世界の半導体産業の売上は2023年に前年比8.8%減少した。企業も一般家庭も支出を抑えたことが響いた。また、2023年を通じた半導体売上ランキングに、2022年から大きな変化があった。Intelは、ライバルのSamsungがメモリーセクターの低迷と、さえないスマホビジネスとで大打撃を受ける中、トップに返り咲いた。そんな中で、AIは半導体業界に明るいニュースで、特に年の後半ではコンテンツと売上の両面で、売上の原動力となりそうだ。NVIDIAはこの潮流に最も恩恵を受けるメーカーで、これに続くのがAMDである。両社ともにAI関連事業をこの先数年にわたって伸ばしていくだろう。
我々は、半導体メーカー各社にとって、2023年は、戦略や見通しの微修正をするとともに在庫を調整して、目前に迫ったAIブームに備える一年であった、と捉えている。Counterpointが提供しているsemiconductor revenue trackerによれば、世界のトップ20社のうち前年比で売上を伸ばしたのは6社にすぎない。特にメモリーセクターは厳しい逆風にさらされ、2023年の売上は前年比43%の減少だった。また、世界のトップ20社は2023年には市場の71%を占めたが、これは2022年の76%から後退している。売上は前年比で14%の減少となった。
(*) 数字はCounterpoint Researchによる暫定集計値である。
Intelは2023年の半導体売上ランキングで首位に返り咲いたものの、売上は前年比で16%減少した。PC向けとサーバー向けの出荷が前年比で二桁落ち込んだことが大きく影響した。Samsungもメモリー市場がDRAM、NANDフラッシュともに減速したことで大打撃を受け、売上は前年比で38%減少した。メモリー市場は、PC、サーバー、スマホの各セグメントで需要が弱かったことに加え、供給過剰と在庫超過もあって、低迷した。メモリー市場での2大勢力であるSK hynixとMicronも、売上は前年比でそれぞれ33%と36%の大きな減少となった。
NVIDIAにとっては、AI製品の展開によって脚光を浴びた2023年であった。同社は今後も半導体産業の成長を牽引すると我々はみている。AIやハイパフォーマンスコンピューティングに利用される汎用GPUにおいて高いシェアを持っているからである。NVIDIAは2023年に前年比86%もの成長を果たし、売上第3位となった。同社がトップ5に入るのはこれが初めてである。
市場動向について、シニアアナリストのWilliam Li氏は以下のようにコメントした。
「2024年の半導体業界全体にとって、人工知能応用製品(AIサーバー、AI PC、AIスマートフォン)が、成長の牽引役を引き続き担うだろう。あとは、メモリーセクターの供給過剰が正常化し需要が回復して、このセクターが回復することにも期待したい。自動車セクターは応用が広がっているため、もう一本の成長の柱になり得る。実際、InfinionやSTMicroelectornicsにとっては2023年の大きな収益源である。」
現在、在庫調整の最終段階であり、クライアントからの需要もしっかりしているので、むしろ十分な供給が可能か、供給の制約について注視する必要がありそうだ。世界最大のファウンダリ―であるTSMCは、直近の四半期決算発表会で、意欲的な設備増強計画について2024年も継続するとした。同社は今後の設備稼働率について楽観的な見通しをもっており、我々の一年を通じて需要が高まるだろうという分析を裏付けるものでもある。