パーソナルコンピューター(PC)は何十年にもわたって生産性向上のための機器として利用されてきました。しかし今、PCは、生成AI(GenAI)のブームをうけて、人工知能(AI)をもつ新時代のPCへと変貌しつつあります。世界のPC市場では、在庫調整と弱含んだ需要が続いていましたが、それはすでに正常化したとみられます。COVID-19による一連の大きな影響についても、ほぼ脱したといえます。PC業界にとって事業を再構築する健全な環境が整ったと言えるでしょう。カウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(英文名:Counterpoint Research HK、以下カウンターポイント社)では、このような状況を踏まえて、AI PCが買い替え需要を復活させる結果、ほぼ5億台のAIラップトップPCが2023~2027年の間に販売される、とする調査結果を発表いたしました。

 

カウンターポイント社ではGenAIラップトップPCを以下の3つのカテゴリーに分類しています。AIベーシック・ラップトップ、AIアドバンスド・ラップトップ、AIケイパブル・ラップトップの3つです。この分類は、計算能力の違い、それによるユースケースの違い、さらに同じ計算能力を得るために必要なエネルギー効率の差を考慮して、定義したものです。AIベーシック・ラップトップはすでに市場に登場しており基本的なAIタスクはこなせるものの、GenAIのタスクを完全にこなす能力は持ちません。NPU(ニューラル・プロセシング・ユニット)やGPU(グラフィック・プロセシング・ユニット)を搭載し、十分なTOPS(毎秒1テラ回の演算)を持つAIアドバンスドやAIケイパブル機種が今年から登場し、AIベーシック機種は置き換わっていくものと思われます。

 

GenAIのPCへの搭載について、シニアアナリストのWilliam Li氏は、次のようにコメントしています。

「AIラップトップの大部分を占めることになるであろうAIアドバンスド・ラップトップの普及は、今後の2年間で急速に進むだろう。チップベンダーがGenAI向け処理の性能を、主な用途がカバーできるところまで高めてくるからだ。GenAIのユースケースは、エッジ(端末)であれ、クラウドであれ、そのハイブリッドであれ、今後数年間で充実してくる。それにつれて、GenAIは、PCセグメントにおいて、デファクトかつ必須な機能となるだろう。適切なツールを用意することと、エコシステムを構築することは、普及にとって欠かせない。例えばQualcommは、Microsoft、Hugging Faceなどのパートナーと共に、最新のAI Stack(訳注:AI処理に向けたソフトウェアのスタック=層状にまとめたライブラリ群)ツールセットを提供しつつ、開発者への宣伝・教育活動を加速させている。」

 

 

Li氏はさらに、次のように続けました。

「ラップトップPC市場全体では、2023~2027年のCAGRは3%程度になる見込みだが、AIラップトップPCに限れば、CAGRは59%の見込みである。計算処理からメモリに至るまでの最先端半導体が新しいGenAI機能の実現を可能にし、消費者にこれまでにない価値を提供する。それがASP(平均売価)の上昇につながる。そして、先端のGenAIアプリケーションを実行できるAIラップトップPCは、2027年には販売されるラップトップPCの4台に3台に達すると予想している。」

 

GenAIをPCに搭載するにあたって、チップベンダーは大事な役割を果たします。最近のトレンドについて、アソシエイトディレクターのBrady Wang氏は、次のように述べています。

「AI PCの第一波は徐々に広がっていく。使われるのは、3つの主要CPUプラットフォームである、Intel Meteor Lake、AMD Hawk Point、Qualcomm Snapdragon X Eliteシリーズだ。また、各社は今年後半に発売されるAIラップトップPCをターゲットにした次世代チップを準備中で、こうしたチップが利用可能になれば、複数の価格帯でAI PCの普及が加速する。また、IntelとAMDは処理能力を重視するPC向けのチップを来年出すだろう。どちらかというと効率重視のArmを採用するQualcommやAppleに対抗し、AIにおける覇権を争うためだ。」

 

さらに、Wang氏は次のように付け加えました。

「また、同時に、AIケイパブル・ラップトップがさらに高性能化するトレンドも起きるとみている。高性能、あるいは超高性能GPUを搭載し、ハイエンドのGenAIアプリケーションの実行を可能にするような流れだ。昨今の大規模言語モデル(LLM)をエッジで処理したり、さらに先端の大規模モデルを扱ったり、ゲーム用グラフィックスを自動生成(AI Gfx)したりできるようになる。NVIDIAなどは自社の能力をさらに高め、このセグメントでのリーダーシップをさらに強固にしようとするだろう。」

 

クラウドとエッジでの生成AIのサポート

コンピューティング環境での生成AI機能のサポートは、当初は全面的にクラウドに依存していました。クラウドの方が、計算の機能も性能も優れているからで、それを活用してモデルの学習も、毎秒何百万も発生しうるクライアントからの推論のリクエストも、処理できるだろうと考えられたのです。しかし、この考え方は実現困難なだけではなく、必要な計算容量、コスト、消費電力の面でも不適切であることがわかってきました。結果として、GenAIの処理能力をエッジデバイスやPC側に持たせることが重要になったのです。

 

出典:カウンターポイント社

 

さらに、計算効率の面だけではなく、データのプライバシーも重要で、この点でもGenAIアプリケーションをエッジで実行することが理にかなっています。このため、エッジでのAI処理においては、エッジに保存するデータの安全性や、エッジの省エネによる環境への配慮が重要になってきます。

 

GenAIのユースケースについて、アソシエイトディレクターのMohit Agrawal氏は次のようにコメントしています。

「PCにおけるGenAIの利用はMicrosoftが主導する形になるだろう。Microsoftの様々なソフトやサービスにCopilot AIを深く結合させるような進め方だ。次のOSであるWindows 12では、開発パートナーであるOpenAI、Adobe、Hugging FaceなどにGenAIやAI全体のエクスペリエンスを普及させる触媒の役割を果たしてもらいつつ、生産性向上やコンテンツ制作を中心にPCでのGenAI普及がさらに進むだろう。AIをウリにするWindows 12が市場に出た時、既存のインストールベースに対するアップグレードや提供するAI機能のレベルをどう設定するか、今後を見守りたい。既存の機種の中にはGenAIアプリケーションをネイティブで実行する能力がないものもあるからだ。」

 

Agrawal氏はさらに次のように続けました。

「Appleは、GenAIをMacに載せてダークホースとして登場する可能性がある。同社は、ハードウェアからサービスまでの、エンド・ツー・エンドの垂直統合型の事業モデルなので、自社開発したArmベースの高性能プロセッサーであるMシリーズ、徹底的にチューニングして最適化したMacOS、新設計のLLM、強力なGenAIアプリケーションのエコシステム、といった資産をフル活用することができる。」

 

【カウンターポイント社概要】

カウンターポイント社(英文名Counterpoint Research HK)はTMT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化した国際的な調査会社である。主要なテクノロジー企業や金融系の会社に、月報、個別プロジェクト、およびモバイルとハイテク市場についての詳細な分析を提供している。主なアナリストは業界のエキスパートで、平均13年以上の経験をハイテク業界で積んでいる。

公式ウェブサイト: https://www.counterpointresearch.com/