【ソウル、北京、ボストン、香港、ロンドン、ニューデリー、サンディエゴ、サンノゼ、台北、東京 – 2025年8月4日】

 

【主なポイント】
•カウンターポイントリサーチの2025年世界AI都市指数で、シンガポールが世界第1位にランクインし、ソウル、北京、ドバイ、サンフランシスコが上位5都市に名を連ねた。
• シンガポールは、公共部門と民間部門の活発な活動が強力なスタートアップ環境を育み、複数の政府施策を推進したことで首位を獲得した。
• MicrosoftとGoogleがAI都市活動を推進する最大手ベンダーであり、データセンター開発、AIトレーニングプログラム、継続的なグローバル展開に重点を置いている。Huaweiは、通信分野での5G-A技術を活用したAI施策展開が注目を集めた。
• 地政学関連の諸問題が地域動向に影を落とすなか、北米が依然としてリードしているものの、中国も急速な追い上げを見せている。欧州では規制関連の障害がAI展開を妨げている。
• 日本では東京と大阪が高評価を獲得したが、名古屋や福岡でも活発なAI関連の動きが見られた。
• 主要産業分野では、NVIDIAのスーパーコンピュータ工場の影響により、ダラスがスーパーコンピューティング分野で北京を抑えて首位に立った。
• 一方で、深圳は、業界のイノベーションを後押しする強力な政府主導の施策により、ロボティクス分野でボストンを上回って第1位にランクインした。
• ベンガルール、リヤド、杭州、サンパウロも、世界で最も急成長しているAI都市である。

 

【背 景】
カウンターポイントリサーチが2025年世界AI都市指数を発表した。これは世界の主要都市圏100カ所におけるAI導入の実態を調査したもので、シンガポールが第1位に選出され、次いでソウル、北京、ドバイ、サンフランシスコが上位にランクインした。同調査では、民間および公共部門における5,000以上の取り組みのほか、通信インフラの充実度、大学による研究成果、スタートアップのエコシステムの強さなど、多岐にわたる要素を分析している。

2025年世界のAI都市Top 15

Source: Counterpoint Research – 2025 Global AI Cities Index.
*スコアは各都市におけるAI展開状況の測定によるもので、最高スコアは100点

 

【地域別ハイライト】
シンガポールが第1位に選ばれた背景として、AI Singaporeなどの組織を通じて政府主導の多様な取り組みが展開され、これによりスタートアップのエコシステムが活性化していること、また、ヘルスケア、交通、通信などの分野で官民が強力に連携していることが挙げられる。僅差の第2位となったソウルでは、ソウル特別市がヘルスケアや教育などの分野でAI導入を積極的に推進しているほか、SK TelecomやNaverといった企業がAIサービスの革新に向けて意欲的な取り組みを進めている。第3位にランクインした北京では、今年からすべての小中学生を対象にAI教育の正式導入が発表されているほか、China UnicomやHuaweiによる複数の5G+AIプロジェクトが展開されている。

日本の都市では東京が世界第7位にランクインしたが、これはおもに地方自治体がAI導入に意欲的であることが評価されたものだ。たとえば品川区では、AIを活用した予算編成が始まっている。また、NTTやTokyo Electronといった大手企業がAI分野で特に活発な動きを見せている一方、Sakana AIなどのスタートアップの存在感も次第に高まっている。関西地方では、2025年の大阪・関西万博を機に多くのイノベーションが生まれており、Mobility-as-a-Service(サービスとしてのモビリティ)方式のシャトルバスなどが導入されている。また、名古屋ではイノベーション拠点であるSTATION Aiの開設が大きな注目を集めている一方、福岡でも観光業界へのAI導入を目指すさまざまな取り組みが進められている。

地域レベルで見ると、AI都市の開発については北米が依然として大きくリードしているが、中国も急速な追い上げを見せている。同レポートの執筆者でリサーチディレクターを務めるMarc Einsteinは次のように述べている。「中国におけるAI都市の発展は、もはや大都市だけにとどまらない。武漢、成都、蘇州といった都市もAI導入を急ピッチで進めている。特にスーパーコンピューティング分野への投資が目覚ましく、北米とのギャップは来年以降、縮まっていくことは間違いない」。ディレクターEinsteinはさらに、欧州は規制環境が厳しいこともあってAI関連の活動水準が北米の約半分にとどまっていること、また今後注目すべき地域は中東であることも付け加えている。

さらに今回の調査における意外な発見についても言及している。たとえば、ドバイは実際にサンフランシスコを上回るスコアを記録しているが、これは政府がエネルギーからメディア制作に至る経済のあらゆる分野で大規模な対AI投資を行っていることによる。Einsteinディレクターは次のように強調している。「ドバイではすべての行政部門にAI戦略担当者が配置されている。すべての教員がすでにAI研修を受けており、One Prompterと称する、100万人のAIエンジニアを育成するプログラムも進行中だ。ドバイが未来に向け投資を行っているのは明らかで、アブダビもこれに迫る勢いを見せている」。Einsteinディレクターはさらに、サウジアラビアが1000億米ドル規模のAI投資計画を進める中心地リヤド、インドのシリコンバレーであるベンガルール、中国発のDeepSeekを生み出した杭州も、この新たなAI都市競争で今後注目すべき重要な都市だと指摘している。

 

AI都市の実現するを支える主要AI・クラウド・データインフラベンダーのエコシステム

2025年 世界のテックベンダーによるAI都市への影響イベント数

Source: Counterpoint Research – 2025 Global AI Cities Index.
注:棒グラフ上の数字は、本調査期間中に各ベンダーについて記録された、AI都市に影響を与えたイベントの総数を示す

 

世界のテックベンダーもAI都市展開に重要な役割を果たしている。2025年AI都市指数によると、Microsoftがこの分野で最も活発なベンダーとして浮上している。同社はAIデータセンターの拠点を大幅拡充するとともに、AI人材育成プログラムを数多く展開し、ロンドンやシドニーなど複数の都市に新たなAIイノベーションハブを設立している。また、ソフトウェア、クラウド、AI技術の分野で世界的な影響力を持つ大手企業のGoogleやAmazonもMicrosoftを僅差で追っており、それぞれAIデータセンターの規模拡大や、各国の政府、大学、企業との連携を複数の分野で進めている。一方、NVIDIAは特にスーパーコンピューティング分野で積極的な活動を展開している。活動例を挙げると、コペンハーゲンに新施設を開設したほか、ドバイでは通信企業のdu、ミラノではFastWebなど世界各地の通信事業者と提携している。また、各国のSovereign AI(国家主権型AI)施策の加速に向けたパートナーシップ構築にも力を入れている。

 

【AI都市展開を加速する通信事業者エコシステムの役割】

通信インフラは、固定と無線の両面において、AI都市発展に重要な役割を担っている。北京ではBeijing Telecomが市内全域に10G光ファイバー網を整備しAI駆動型アプリケーションの基盤を構築している一方、ボストンではVerizonが、増加するAIワークロードに対応するため通信容量を強化している。モバイルネットワーク管理でもAIの役割は拡大している。デリーではAirtelが毎日100万件のスパムメールや迷惑電話をAIでブロックしており、リヤドではSTCがRiyadh Season期間中の5Gネットワークトラフィック管理の自働化にAIを活用している。シンガポールのSingtelはGPU-as-a-Service(サービスとしてのGPU)など新たな製品を提供し始めており、大阪ではSoftBankやKDDIがAIデータセンター投資を積極的に進めている。トロントではRogersが5G活用で監視カメラシステムのセキュリティ管理を行っている。

【カウンターポイント・リサーチについて】

カウンターポイント・リサーチは、テクノロジーエコシステム全体を対象とした製品を専門とするグローバルな市場調査会社です。
当社は、世界中の主要なイノベーション・ハブ、製造クラスター、商業都市に拠点を構え、スマートフォンOEMからチップメーカー、チャネル企業、大手テクノロジー企業に至るまで、幅広いクライアントにサービスを提供しています。
経験豊富な専門家が率いるアナリストチームは、企業の経営幹部、戦略担当者、アナリストリレーション(AR)、市場情報(MI)、ビジネスインテリジェンス(BI)、製品およびマーケティングの各部門のステークホルダーと連携しながら、市場データ、インサイト、コンサルティングなど幅広いサービスを提供しています。
当社の注力分野には、AI、自動車、コンシューマーエレクトロニクス、ディスプレイ、eSIM、IoT、位置情報プラットフォーム、マクロ経済、製造、ネットワークインフラ、半導体、スマートフォン、ウェアラブルなどが含まれます。

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