エグゼグティブサマリー
- Kimi、Qwen、DeepSeek、GLMは、単なる「安価な代替モデル」の域を超え、コーディング、エージェント型AI、長大なコンテキストを扱うワークロードの幅広い領域で、現実的な代替選択肢となる水準に達しています。今後の米中AIモデル競争を左右するのは、ベンチマークでどちらが首位に立つかということよりも、開発者が実際の処理をどのモデルに振り分けるかという判断になっていくことでしょう。4つの有力なモデルファミリーが存在する状況は、もはや単なるベンチマーク上の出来事ではなく、一つの「供給構造」が形成されつつあることを意味します。
- 「第二のデフォルト(second default)」とは、ベンチマーク上で世界2位のモデルになることではありません。プロプライエタリな最先端モデルが高すぎる、閉鎖的すぎる、柔軟性に欠ける、あるいはそのタスクには単純にオーバースペックである場合に、開発者が日常的にまず検討する代替候補になることを意味します。その証拠は宣伝文句ではなく、実際の利用行動に表れています。DeepSeekは2026年6月初旬までにOpenRouterにおけるトークン利用シェアの18%に達し、Lindy.aiはエージェントの処理をClaudeから他モデルへ移行することで推論コストを約90%削減しました。また、HarveyはMoonshotのKimi K3をポストトレーニングし、自社独自の法律分野向けモデルへと発展させています。
- 競争の単位は、トークン単価から「タスクを1件成功させるためのコスト」へと移りつつあります。AIエージェントでは、一つの指示から数十回ものモデル呼び出しが発生するため、経済的に重要なのは「どのモデルが最も賢いか」ではなく、「許容できる品質の結果を最も低コストで出せるのはどのモデルか」です。この考え方は、複数のモデルを使い分ける「カスケード型」の構成を有利にします。そしてカスケード化が進めば、欧米のAI企業は顧客との関係を維持しながらも、実際のトークン処理量を他のモデルに奪われる可能性があります。それだけでも、AI業界の収益構造を変えるには十分です。
- AIモデルの知能そのものが代替可能になっていくほど、「どのモデルを選ぶか」を決めるレイヤーの価値が高まります。中国発のオープンウェイトモデルは、汎用的な推論能力に対してこれまで存在していた希少性プレミアムを押し下げる一方、その周辺にあるルーティング、ホスティング、オーケストレーション、アプリケーションといったレイヤーの価値を高めています。中国製AIモデルが世界でどこまで普及できるかを最終的に制約するのは、能力そのものではなく、信頼と地政学です。

出典: カウンターポイントリサーチ
中国製AIモデルが世界の開発者環境に入り始めている
AI業界では、この2年間、中国のAI研究機関が米国勢とのフロンティアモデルの性能差を縮められるかどうかが大きな論点となってきました。しかし今年に入ってから、この問いは次第に重要性を失いつつあり、それに代わって、投資判断の観点からより重要な問いが浮上しています。それは、開発者が実際の処理を欧米のモデルではなく、中国製モデルへ振り分け始めているのかということです。
転換点となっているのは、中国の複数のモデルファミリーが、インテリジェンス、コンテキスト長、エージェント機能の面で十分な水準に達すると同時に、コスト構造や利用者側が持てるコントロールの面でも明確な違いを提供するようになり、モデルを切り替えることが合理的な選択になり始めたことです。
一つのモデルだけであれば、ベンチマーク上で一時的に注目された事例として片付けることもできます。しかし、Kimi、Qwen、DeepSeek、GLMという4つ、あるいはそれ以上の有力なモデルファミリーが存在するようになると、それは単なるベンチマーク上の現象ではなく、一つの供給構造が形成されつつあると捉えるべき段階に入っています。
本記事における完全版調査レポートは、こちらからご覧いただけます。
https://counterpointresearch.com/en/reports/chinese-open-models-are-becoming-the-global-second-default
こちらの調査レポートも併せましてご参照ください。
• Counterpoint Technology Overview – August 2026
• AI 360 Pulse – Industry Trends, Intelligence and Impact, July 2026
*本記事は2026年9月1日に発表されたプレスリリースの日本語版です。原文はこちらをご参照ください。
https://counterpointresearch.com/en/insights/china-does-not-need-to-beat-claude-it-needs-to-be-second
【カウンターポイントリサーチ概要】
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