半導体ファウンダリ業界の巨人、TSMCは2022年後半に在庫調整を行って以来その地位を盤石にしており、最先端プロセスノードの稼働率は高止まりしています。
カウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(英文名:Counterpoint Research HK、以下カウンターポイント社)の調査によれば、同社の3nmプロセスの初期需要はこれまでになく高いものとなっています。Apple A17 Pro/A18 Proやx86 PC CPU、さらにその他のAP SoCを製造しており、量産開始から5四半期(Q+5)でフル稼働になっています。
今後は、NVIDIAのRubin GPUに加え、GoogleのTPU v8や、AWSのTrainium 3などのAI ASICが加わります。こうしたAIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の需要に支えられ、稼働率が高い状態が続くでしょう。
対照的に、過去の7/6nmや5/4nmノードの立ち上がりはもっと緩慢でした。これらのノードはスマートフォン市場向けだったからです。7/6nmの稼働率がピークだったのは、コロナ禍でモバイル需要が高まった2020年頃で、もう一方の5/4nmは2023年半ばに勢いを取り戻し、それ以降順調に回復しています。この回復を支ええtいるのはAIアクセラレータ需要の急上昇で、特にAIデータセンター向けで伸びたNVIDIAのH100、B100、B200、GB200のおかげで5/4nmノードの稼働率は大きく増加しました。
次の2nmの可能性については、私たちは、順調に立ち上がるとみています。過去のどのノードよりも早く、4四半期目(Q+4)にはフル稼働になるでしょう。スマートフォンもAI関連も需要が高いからです。TSMCも、2025年第1四半期の投資家向け説明会で同様なコメントをしています。「2nmプロセス導入後、最初の2年間にテープアウトするチップの数は、3nmや5/4nmの最初の2年間より多いだろう。スマホもHPCも需要が強いからだ。」
Appleの他にも、Qualcomm、MediaTek、Intel、AMDなどが2nmプロセスを採用する可能性があります。このように幅広く採用される可能性があることから、2nmノードの稼働率も高い状態が続くと期待されます。
地政学的なリスクを緩和し、合わせて米国の需要に応えるため、TSMCは1,650億ドル(約23.8兆円)を投じてアリゾナに製造拠点を建てる予定です。この工場では4nmや3nmに加えて2nmやさらに先のノードも製造する計画です。
中核となるR&Dやプロセス開発は台湾に残るものの、米国の新工場がやがてはTSMCの2nm以降の製造の30%ほどを担うようになるかもしれません。同社の2拠点戦略は地政学的なリスクに対する耐性を高めるとともに、AIやHPCのニーズに応える製造キャパシティも実現します。これによって、2030年頃まで最先端ノードで高い稼働率を維持し続けることになるでしょう。
【カウンターポイントリサーチ社概要】
カウンターポイントリサーチ社(英文名Counterpoint Research HK)はTNT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化したグ
ローバルな調査会社です。主要なテクノロジー企業や金融系企業に、モバイル、車載、AIなどハイテク市場についての週次・月次・四半期毎に、市場データ、個別プロジェクト、詳細な分析レポートを提供しています。また、ハイテク業界で経験を積んだエキスパートが当社のアナリスト陣を構成しています。
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