• 世界のHLOS*(高機能OS)搭載スマートウォッチ市場は、2024年に15%の堅実な伸びをみせると予測される。
  • Apple WatchOSが支配的ではあるが、今年はHarmonyOSとGoogleのWear OSの採用が延びている。
  • 中国では、Huawei製5Gスマホの高い人気をうけてHarmonyOS搭載のスマートウォッチのシェアは61%に達するとみられる。
  • Wear OSの伸びを支えている主要メーカーには、Samsung、Google、OnePlus、OPPO、Xiaomiがある。

 

世界のスマートウォッチ市場はここ数年急速に成長してきた。これを支えているのが、ベーシックスマートウォッチの爆発的な伸びである。ベーシックスマートウォッチは、おおむね100米ドル(約1.5万円)を切る価格が設定され、メーカー独自のシンプルなリアルタイムOS(RTOS)上に基本的な機能とアプリを搭載している。一方で、先進的なスマートウォッチ(高機能OS、略してHLOSを搭載)は、これまでのところ、主にAppleSamsungが牽引して堅実な成長をみせてきた。

 

しかし、我々がまとめた最新のglobal smartwatch tracker and forecast by region, brand and OSによれば、世界のHLOS搭載スマートウォッチ市場は、頭打ちだった2023年から転じて、2024年は前年比15%の伸びと予測されている。この成長の大部分は非Appleスマホユーザーたちが、中国国外ではWear OSベースのスマートウォッチを、中国国内ではHuawei HarmonyOSベースのスマートウォッチを購入した結果である。

 

例えば、先進スマートウォッチセグメントでは、Google Wear OSの中国国外でのシェアは2024年中に27%に達するとみられる。これは、主にWear OS搭載の先進スマートウォッチの機種が増えるためで、例えば、最新のGoogle PixelOnePlus Watch 2がある。それに加えて、Samsung Galaxy Watch 6シリーズも新しくなった。

 

市場の状況について、シニアリサーチアナリストのAnshika Jainは以下のようにコメントした。

スマホと同様に、消費者の購買パターンに高級機指向がみられる。初めてスマートウォッチを買ったユーザー層、つまりAndroid陣営に属していて買い替えを考えているようなユーザー層は、よりよい体験を求めて、そのためには次はもっとお金を払ってもいいと考えている。そんな状況なので、GoogleのAndroid Wear (Wear OS)の採用が一段と伸びると想定している。というのも、Wear OS搭載機種は3rdパーティ製ソフトが充実しており、Google AIアシスタントも使え、ヘルストラッキングも高精度である。それにカスタマイズもでき、電池の持ちも良いからだ。」

 

Jain氏はさらにこう付け加えた。

「これまで、Wear OSの搭載は、ほとんどがSamsung製スマートウォッチだったので、Androidスマホのユーザーにとっては、ウォッチの選択肢が狭かった。しかし、GoogleとQualcommは、ようやくOnePlus、OPPO、Xiaomiなどの主要スマホメーカーの興味を引くことができたようで、今年に入るとこうしたメーカーから高級機ながら値ごろなWear OSベースのスマートウォッチが中国国外で発売されるようになった。さらに、Google自身もPixel watchでWear OSの採用増に世界中で貢献している。」

 

Wear OSと並んで、中国国内でHuawei製スマートウォッチの人気が高まるにつれて、HarmonyOSも伸びている。これについて、アソシエイトディレクターのEthan Qiは以下のように述べた。

「2023年に、HarmonyOSの出荷はほぼ倍増し、AppleのWatch OSを抜いた。HarmonyOSの出荷シェアは、中国国内では2024年中に61%に達するとみられている。2023年には48%であった。Huaweiが5Gスマホを昨年発売し、これが引き金となってHuawei製スマートウォッチの購入率も増え、それが中国における先進スマートウォッチ市場の拡大につながっている。」

 

出典:Counterpoint Global Smartwatch Quartery Model Tracker, Q1 2018 – Q4 2023

 

スマートウォッチ向けのチップセットについては、AppleとSamsungが先進スマートウォッチ市場の2/3を占めている。HengxuanとQualcommは、2024年に二桁成長となりそうだ。QualcommはW5+ Gen1とW5 100プロセッサーファミリをさらに発売することで成長し、またHengxuanは中国国内でHuaweiとXiaomiのスマートウォッチに採用されることで成長することになりそうだ。

 

今後発売される機種については、デュアルチップセットとデュアルOSの新しいトレンドがみられそうである。これは、Qualcomm製などのハイエンドのプロセッサーに、低消費電力のコプロセッサーとハイブリッド版のWear OSを組み合わせたもので、アプリに応じてRTOSとHLOSを使い分けて消費電力と性能の良いところ取りを狙うものである。Ambiq Micro、BES Tech、それにGoodixはこのトレンドに乗じて先進スマートウォッチ市場でのシェアを伸ばすだろう。つまり、ハードウェアメーカーにとっては、Wear OSなどのソフトウェアプラットフォームと協業することで端末の能力を引き上げることができるわけで、そうした協業の機会が広がったことになる。MicroEJ(訳注:組み込み機器向けの仮想化技術を提供するIT企業)のような企業が、そのままでは複雑なデュアルOSによるアプリの構造を抽象化して管理しやすくするために、重要な役割を果たすだろう。

 

OSやチップセットに関して新たなトレンドが生まれている。その一方で、スマートウォッチ用ディスプレイが差別化の鍵になりつつある。Counterpoint company DSCCのシニアディレクターDavid Naranjoは以下のように述べた。

「スマートウォッチ向けディスプレイパネル出荷推移を追っているが、たいていの先進スマートウォッチが採用する最先端のOLEDやマイクロLEDディスプレイのサプライヤーの受注が2024年は16~18%増えている。2023年下半期からの勢いが継続している。OLEDパネルは、サイズが大型化しているのに加え、価格が3%下落している。」

 

スマートウォッチの種類:

 

*先進スマートウォッチ、HLOS搭載スマートウォッチ: 高機能OSを搭載する電子的なウォッチで、Watch OS (Apple)やWear OS (Samsung)がその例である。3rdパーティ製のソフトをインストールすることができる。

 

ベーシックスマートウォッチ: 軽量なOSを搭載する電子的なウォッチで、3rdパーティ製のソフトをインストールすることはできない。

 

 

Team Counterpoint

Counterpoint Researchは若く急成長中の調査会社で、ハイテク業界の分析を得意としている。カバーする領域は、コネクテッド機器、消費者向けデジタル製品、ソフトウェアとアプリケーション、および関連分野のトピックスである。当社の調査チームがまとめて発行するレポートに加え、要望に合わせてカスタマイズしたレポートも提供している。また、セミナーやワークショップを企業向けに開催して好評を得ており、依頼があれば実施している。特に高精度の調査を必要とするプロジェクト向けには、コンサルティングやカスタマイズした調査活動も実施する。