2025.05.13| PR|

 

世界のPC出荷は2025年第1四半期に前年同期比6.7%増加して6,140万台になったとする暫定結果をカウンターポイント・リサーチ・エイチ・ケー(英文名:Counterpoint Research HK、以下カウンターポイント社)が発表しました。この成長の大きな要因は、まずPCベンダーが米国の関税政策に備えて出荷を加速させたこと、そしてWindows 10のサポートがもうすぐ切れるなかAI搭載PCの採用が増えていることです。とはいえ、この輸出増加は一時的なものとみられます。今後数週間で在庫レベルは変化しなくなるでしょう。米国の関税政策は、むしろ2025年の業績の足を引っ張ると予想されます。

AppleとLenovoはこの四半期、新製品の投入と市場動向のおかげで、業績好調でした。Appleの出荷は、AIを搭載したM4プロセッサベースの新型MacBookシリーズのおかげで、前年同期比17%増加しました。また、Lenovoの出荷は、AI搭載PCの追加と製品ポートフォリオを広げたことで、前年同期比11%成長しました。Lenovoは最大の市場シェアを確保し、首位を守りました。一方でHPとDellは、米国市場への駆け込み需要に乗るかたちで、この四半期それぞれ前年同期比で6%と4%、出荷を増加させ、結果として第1四半期の第2位と第3位を維持しています。米国の関税政策の不透明さによる駆け込み需要は他の主要メーカーでも発生しており、結果として大手メーカーにシェアが集中する現象が起きています。

これについて、シニアアナリストのWilliam Li氏は次のように述べています。

「今後は、メーカー各社がサプライチェインや製造拠点をいかに多様化できるかが重要になる。加えて、最良のAI体験を届けるための、チップ、ソフト、AIモデルに至るエコシステムのパートナーシップも、もちろん重要だ。この2つによって競争力が決まるだろう。」

世界のPCの製造は、いまも中国が中心になっており、これが短期的には関税リスクを回避する上で大きな問題になっています。米国は最近になってラップトップを関税から除外すると発表しましたが、一方でトランプ政権は今後数か月のうちに半導体やハイ的製品に新たな関税を課す計画で、不透明さはぬぐえません。ラップトップのODM(設計・製造を受託する企業)やEMS(製造を受託する企業)は、今後も、ベトナム、インド、メキシコなど中国国外への製造移転を加速させるでしょう。とはいえ、こうした移転先の国々も程度の差こそあれ関税が課せられています。それでも、PCメーカー各社は米国仕向けのPCを中国国外の製造ラインに切り替えることを最優先課題とするだろうと、我々は考えています。

米国の関税政策は2025年のPC業界全体に不透明感をもたらしています。製造コストの増加は需要と供給の縮小を招く可能性があります。スマートフォンやラップトップに対する例外措置が一時的な気休めにはなるものの、予定されている半導体への米国の関税はサプライチェインの分断や、ひいては需要の縮小、そしてAIインフラやAI搭載機器への開発投資の縮小を、引き起こしかねません。

アソシエイトディレクターのDavid Naranjo氏は次のように述べています。

「米国市場は、AI搭載PCの能力をアピールする上で最重要だ。そして、最先端のAI搭載機器を売るのに最も適した市場でもある。高関税や、今後の関税政策の不透明さによって、消費者や企業は追加の費用を支払ってでも新しいPCを買おうという意欲がわかないだろうし、それによって成長はおさえられ、普及も遅くなる。我々は2025年のPC市場は一桁%台の真ん中くらいの出荷増と予想しているが、世界的な経済の先行きへの不安は、この予測への下振れリスクと考えざるを得ない。」

 

【カウンターポイントリサーチ社概要】
カウンターポイントリサーチ社(英文名Counterpoint Research HK)はTNT(テクノロジー・メディア・通信)業界に特化したグ
ローバルな調査会社です。主要なテクノロジー企業や金融系企業に、モバイル、車載、AIなどハイテク市場についての週次・月次・四半期毎に、市場データ、個別プロジェクト、詳細な分析レポートを提供しています。また、ハイテク業界で経験を積んだエキスパートが当社のアナリスト陣を構成しています。
公式ウェブサイト: https://www.counterpointresearch.com/