- TeslaはOptimusを取り巻くサプライチェーンを既に確立しており、Optimus V3の量産に向けた強固な基盤を築いている
- Optimus V3の2026年下半期における1台あたり製造コストは6万ドル超になると推定され、新設計の22自由度(DoF)デクスタラスハンドが、総BoMコストの約20%を占める見込みに
- Optimus V3のTier 1サプライヤーは、Teslaが近い将来にOptimusロボットを週2万台生産する計画に対応するため、中国国内外で生産能力の拡大を進めている
- TeslaはEV事業の初期量産立ち上げ時と比較し、はるかに短い期間でOptimusの累計10万台目を出荷するとみられており、主要パートナーに数十億ドル規模の追加収益をもたらす可能性がある
Tesla初の量産EVモデルであるRoadsterは、同社の創業から5年後に発売されました。その後の5年間で、同社の世界EV出荷台数は着実に増加し、2013年には2万台超、2017年には10万台超に到達しました。その後、成長はさらに加速し、2022年には100万台の節目に到達しました。現在、Teslaは初の量産ロボットとなるOptimus V3の市場投入を控えており、再び大きな期待を背負っています。OptimusがTeslaのEVと同様の華々しい成長軌道を再現し、今後10年間で同社の中核的な成長エンジンへと進化できるかが注目されます。
図1: Tesla Optimusのマイルストーン

出典:カウンターポイントリサーチ Robotics Research
Tesla Optimusの競争優位性
世界各地で登場しているヒューマノイドロボット企業と比較すると、Teslaは主に3つの点で明確な競争優位性を持ち合わせています。
1. 自社プラットフォーム能力: AI推論チップ、ロボット向けに最適化されたニューラルネットワーク、マルチモーダル認識、駆動制御、電力管理アルゴリズムまでを内製でカバー
- 最新のAI5プラットフォームは2,000TOPSを超えるAI演算性能を提供し、ビジョン中心のエンドツーエンド型VLAアーキテクチャを可能にする
- Full Self-Driving(FSD)をめぐって蓄積してきた強固な技術基盤により、Optimus V3のVLAモデルは、マルチタスクへの汎化性能や複雑な環境理解において業界をリードする性能を備えると見込まれる
- さらに、Xプラットフォームから日々膨大なデータを取り込む進化中のGrokを活用することで、Optimus V3は物理世界をより深く理解し、相互作用できるようになり、人間らしい会話にも対応可能に
2. データフライホイールを回すうえでの独自の優位性
- Teslaが世界各地に持つEV製造拠点は、Optimus V3の産業用途での導入を促進する豊富な実世界の運用データを生み出している
- TeslaがDojo 3プロジェクトを再開したことで、Optimus向けVLAの開発には十分な計算リソースが供給される見通しに
- 数百万人規模のFSD加入者と数億人規模のXユーザーが、ビジョンモデルと言語モデルを継続的に最適化するための膨大な学習データを生み出している
3. 既存EVサプライチェーンとの重複
- Tuopu Group、Sanhua Intelligent Control、Xusheng Group、Glory MicaなどのTier 1サプライヤーは、TeslaのEV事業で長年の実績を持つパートナーであり、Optimus V3の量産計画を全面的に支えている
- センシングおよび認識部品について、Optimus V3はTeslaが既に構築している成熟したカメラおよびIMUのサプライチェーン資産を活用している
- 加えて、Optimus V3の電源システムは、バッテリー、熱管理、急速充電、電力制御で蓄積された技術を最大限に再利用できる
Optimus V3プログラムに深く関与する中国パートナー
中国企業数十社が、Optimus V3の初期量産立ち上げを支援するTier 1またはTier 2サプライヤーとして認定されています。Teslaは主要サプライチェーンパートナーと長期契約を締結し、海外拠点の建設を含む先行的な生産能力増強を促すとみられます。
この前提において、Optimus V3の製造コストは生産規模拡大の曲線と密接に連動し、生産台数が1万台未満であると仮定した場合、2026年下半期の1台あたり製造コストは6万ドル超になると推定されます。新設計の22自由度(DoF)デクスタラスハンドは、総BoMコストの約20%を占める見込みです。
図2: Optimus V3のハードウェアコスト内訳

出典: カウンターポイントリサーチ Robotics Research
※Teslaはグリッパーの生産をLens Technologyに外部委託しており、単価は約300ドルである。一方、デクスタラスハンドの価値は6,000ドルとされる。
図3: Optimus V3アクチュエーターの主要サプライヤー

出典: カウンターポイントリサーチ Robotics Research
TeslaとTuopu GroupはOptimus V3のリニアアクチュエーターを共同開発しており、Tuopuは完成品アセンブリの独占サプライヤーとなっています。さらに同社は、遊星ローラースクリュー、フレームレストルクモーター、エンコーダーといった周辺部品を内製できるため、Optimus V3全体のBoM価値の中で高い比率を占めています。
リニアアクチュエーターモジュールの中核部品である遊星ローラースクリューだけで、モジュール製造コストの約40%を占めます。Zhejiang XCC、Hengli Hydraulic、Shuanglinが開発した遊星ローラースクリューはいずれもTeslaの認証を通過しています。
ロータリーアクチュエーターについては、Sanhuaが完成モジュールの主要サプライヤーを務め、同社の液冷技術を活用してモーター性能を最適化しています。ロータリーアクチュエーターに使われるハーモニックドライブとRV減速機は、それぞれLeaderdriveとShuanghuan Transmissionが供給しています。また、Wolong Electricはフレームレストルクモーターの主要サプライヤーであり、Xusheng Groupは対になる関節ハウジングであるマグネシウム・アルミニウム合金製部品を生産しています。
図4: Optimus V3デクスタラスハンドの主要サプライヤー

Tuopuは2024年9月にデクスタラスハンド専門部門を設立し、Optimus V3向けデクスタラスハンドの開発でTeslaと協力してきました。Glory MicaはTuopuにマイクロボールスクリューを供給しています。二次サプライヤーであるSeenpinは、自社設計の差動ローラースクリューを活用し、Optimusのスクリュー・腱駆動ハイブリッド方式に適したデクスタラスハンドを製造しています。
MOONS’は現在、コアレスモーターの独占サプライヤーであり、Zhaoweiは対応する遊星ギアボックスを生産しています。EWPTは構造部品を製造するだけでなく、指先センシングソリューションのサプライヤーも務めています。Hanweiのピエゾ抵抗式電子スキンは、手全体をカバーするセンシングを可能にしています。
各種アクチュエーターと左右一対の高自由度(DoF)デクスタラスハンドは、総BoMコストの約60%を占めており、この領域でTeslaは中国パートナーと緊密に協業しています。その他の分野においても、多数の中国ベンダーがOptimus V3のサプライチェーンに入り込んでいます。例えば、OptimusはTesla EVのカメラ優先型認識アーキテクチャを継承しており、LCEが必要な魚眼カメラを供給しています。一方、ORBBECの深度ビジョン技術は、手首搭載型カメラアクセサリーに採用される予定です。
図5: Optimus V3のその他の中国サプライヤー

出典: カウンターポイントリサーチ Robotics Research
Optimus V3のTier 1サプライヤーが生産能力拡大を加速
Optimus V3のサプライチェーンは、Teslaが過去10年にわたり構築してきた成熟したEVエコシステムを基盤として拡張・発展したものだ。現在のヒューマノイドロボット市場の規模はまだ限定的であり、Teslaが今後3年間で累計100万台の出荷を達成できるかについては不確実性が高いと言えます。それでもサプライヤー各社は、Teslaとの長年にわたるパートナーシップを背景に、Optimus V3の将来性に大きく賭け、先行投資を行いながら中国国内外で積極的に生産能力を拡大しています。
TuopuとSanhuaにとって、TeslaはEV分野における最大顧客です。特にTuopuにとっては、Teslaが売上の3分の1超を占めている。このような背景から、両社はTeslaとの長期的な協業関係をEVの枠を超えてOptimusプログラムへと広げるうえで、有利な立場にあります。TuopuとSanhuaはそれぞれ独立したロボティクス部門を設立しており、近い将来にOptimusロボットを週2万台生産するというTeslaの計画に歩調を合わせて生産能力を構築する方針を示しています。
2025年度において、ヒューマノイドロボット用途のアクチュエーター売上はTuopuの売上全体の0.05%未満に過ぎませんでした。それでもTuopuは、リニアジョイント、ロータリージョイント、デクスタラスハンドのアセンブリから、ボディ構造部品、足部ダンパー、各種センサーのカスタム生産に至るまで、幅広い製品ポートフォリオを整備しています。同社の寧波にある製造拠点は、年間30万セットのアクチュエーター生産に対応しています。さらにTuopuは、タイでは12mmおよび10mmモーターなどのマイクロ部品、メキシコでは大型構造部品、米国ではアクチュエーターアセンブリといった形で、海外拠点にヒューマノイドロボット用途専用の生産ラインを構築しています。
フリーモントにおけるOptimus V3の量産需要に対応するため、Sanhuaはメキシコ工場でロータリーアクチュエーターを組み立てる予定です。同工場にはLeaderdriveとの合弁会社があり、高品質なハーモニック減速機の設計に関する同社の専門性を活用します。加えてSanhuaは、デクスタラスハンドとコアレスモーターの開発にも投資しており、Optimus向け次世代デクスタラスハンドシステムの開発でTuopuに対抗する構えを見せています。
ここで冒頭の問いに戻りたいと思います。TeslaがTier 1サプライヤーに示している生産能力拡大のガイダンスは、Optimusの売上を200億ドル規模へと押し上げる成長軌道を示唆しています。これはTeslaの2025年度自動車部門売上の約28.8%に相当します。仮にスケジュールが後ろ倒しになったとしても、TeslaはEV事業の初期量産立ち上げ時と比較して、はるかに短い期間でOptimusの累計10万台目を出荷するとみられます。右下のチャートで示されるシナリオでも、TuopuやSanhuaなどのパートナーに数十億ドル規模の追加収益をもたらす可能性があります。
図6: Optimusの成長軌道と規模拡大によるコスト低減の前提

出典: カウンターポイントリサーチRobotics Research
ヒューマノイドロボットの商用化が加速する中、カウンターポイントリサーチではグローバルヒューマノイド出荷台数が2026年に5万台を超え、2027年には10万台を上回ると予測しています。Teslaはサプライチェーンと技術面での強みを背景に、今後大きな市場シェアを獲得するとみられます。同社のサプライヤーは、Teslaのフリーモント工場におけるOptimus V3の生産能力拡大を背景とした新たな収益源を確保するため、投資を加速しています。
カウンターポイントリサーチのロボティクス調査部門の詳細はこちらのページをご参照ください。
*本記事は2026年6月10日に発表された記事の日本語版です。原文はこちらをご参照ください。
https://counterpointresearch.com/en/insights/blog-tesla-to-leverage-ev-experience-and-chinese-partners-to-ace-humanoids-market-unlock-huge-revenue-potential
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