カウンターポイントリサーチ (英文名: Counterpoint Research 以下、カウンターポイントリサーチ)は、2026年上半期において、中東地域は世界で最も成熟したソブリンAI LLMエコシステムを構築した地域となったという調査結果を含む2026 Sovereign AI LLM Indexによる最新調査を発表致しました。
カウンターポイントリサーチの最新調査2026 Sovereign AI LLM Indexによると、2026年上半期において、中東地域は世界で最も成熟したソブリンAI大規模言語モデル(LLM)エコシステムを構築した地域となりました。特にアラブ首長国連邦(UAE)のソブリンAI LLM「Falcon H1」が、すべての評価項目で最高水準の評価を獲得し、中東地域は4つのモデルにおいて、評価スペクトラムの最上位を獲得するなど、圧倒的な存在感を示しました。
本調査では、中東、中・東欧、西欧、アジア太平洋地域(中国を除くAPAC)、中央アジア、アフリカ、北米(米国を除くカナダ)、中南米(CALA)を対象に、80か国以上を調査しました。分析対象は米国と中国を除く各国のソブリンAI LLM開発であり、各国が独自のLLM開発能力をどのように構築・競争しているかを評価しています。55か国以上でのソブリンLLMの開発、170を超える最新のアクティブモデルを分析し、評価では、ソブリンLLMの所有体制、基盤モデルの開発能力、現地言語への対応力、実用化の進展という4つの観点から、各国エコシステムの成熟度を測定しています。
ソブリンAI Indexは、カウンターポイントリサーチの「AI 360 Practice」を構成する基盤調査の一つであり、これまで展開してきた「Global AI Cities Index」の実績を基に開発したものです。本調査では、各国が競い合うソブリンAIモデル、AIインフラ、AIサービスの現状を詳細に分析・可視化するとともに、自国のみならず他国にとっても参考となるソブリンAI戦略のモデルを明らかにしています。
ソブリンAI LLMの重要性に関して、カウンターポイントリサーチのリサーチディレクターMarc Einsteinは次の通り述べています。
「ソブリンAI LLMを取り巻く環境は、国家戦略上の重要課題へと大きく変化しています。各国は、データセキュリティ上のリスクへの対応に加え、言語の多様性や技術的自立性を確保する観点から、LLMの主権(LLM Sovereignty)を重視するようになっています。さらに、最近のClaude Fable 5の利用禁止措置にも見られるように、海外で開発されたLLMの利用には政治的リスクも高まっており、自国開発モデルの重要性は一段と高まっています。」
図: カウンターポイントリサーチ・ソブリン AI LLM Index

出典: カウンターポイントリサーチ AI 360 Practice – Sovereign AI Research, July 2026
※Sovereign AI LLM Spectrumは、各LLMがどの程度ソブリン性を備えているかを、
複数の評価軸に基づいて測定した指標です
ソブリンAIスペクトラムの最上位に位置するLLMは、オーナーシップ、基盤モデル開発能力、ネイティブ言語への対応力、実社会での活用という主要な評価項目すべてにおいて高い水準を示しており、これらの総合力が最上位グループへの位置付けに繋がっています。
中東のソブリンAI LLMが世界をリード
- 中東は、UAEとサウジアラビアを中心に、世界で最も先進的なソブリンAI LLM地域となりました。
- 4つのフラッグシップモデルであるFalcon H1・ALLaM・Jais 2・K2 Think V2が、ソブリンAI LLMスペクトラムの最上位に位置しています。
- これらのモデルは、政府系組織によるオーナーシップ、アラビア語の多様な方言への包括的な対応、さらにUAEの行政スーパーアプリ「TAMM」に代表されるようなソブリンAIネイティブサービスへの幅広い展開が高く評価されています。
その他の主要ソブリンAI LLM
- ロシア: GigaChat 3.1 Ultraは、UAEのFalcon H1に最も近い競争力を持つモデルです。Sber AIが7020億パラメータ(702B)のモデル開発から、自社スーパーコンピューターChristofariによる学習、さらにGigaChatを中心とした複数アプリへの展開まで一貫して手掛ける垂直統合型の体制が競争力となっています。
- インド: IndiaAI Missionの下でSarvam AIが開発したSarvam 105Bは、インド初の最先端基盤モデルです。22のインド言語に対応し、Indusアプリを通じて提供されており、インドの膨大なユーザー基盤をソブリンLLMへ移行させる重要な基盤となっています。
- スイス: スイスは、産学官コンソーシアムによる公共主導のオーナーシップを背景に、ソブリンAI LLMスペクトラムの最上位グループに入りました。
- 韓国: A.X 3.1は、政府支援を受けながら、消費者向けアプリA.(A-Dot)を通じて幅広いユーザー基盤を獲得している点が特徴です。
- 日本・フランス: 日本ではPreferred Networksが開発したPLaMo 3.0 Prime、フランスではCINECAとの共同開発によるコンソーシアム主導のMinervaが、それぞれチャットボットへの実装を通じて普及を進めています。日本は政府支援、フランスは官民連携(PPP)による所有体制が、それぞれ強みとなっています。
スペクトラム全体に関して、Marc Einsteinは次の通り分析しています。
「能力と普及状況の両面から見ると、ソブリンAIスペクトラム最上位の10モデルはいずれも基盤モデルであり、公的資金、あるいは官民共同開発によって生み出されています。また、多くは英語ベンチマークよりも、自国言語への深い最適化を優先しています。地域別では、アブダビ(UAE)のTechnology Innovation Institute(TII)が最も優れた政府系開発機関となっており、そのFalcon H1はすべての評価項目でトップに立っています。」
さらにEinstein氏は調査全体の結果に関して、次の通り述べています。
「ソブリンAI LLM全体では、既存の基盤モデルをベースに開発された『適応型モデル』が56%を占め、一から開発された基盤モデルを上回っています。しかし、多くの国では海外のオープンソース基盤モデルへの依存を減らすため、独自基盤モデルの構築へ戦略的な転換を進めています。また、開発主体を見ると、Mistral AI、Sakana AI、Cohere、Sarvam AIなどのAI企業やスタートアップが、基盤モデル・適応型モデルの両方で重要な役割を担っています。」
韓国は、長期的なソブリンAI投資額が1兆ドルと世界最大規模となっています。一方、日本では経済産業省(METI)のGENIACプログラムを通じて国内LLM開発が支援されており、両国ともソブリンAI LLM分野で着実に存在感を高めています。
地域別概要
中東
中東は、UAEのFalcon H1を中心に、世界のソブリンAIをけん引する地域となりました。Falcon H1を開発したTechnology Innovation Institute(TII)がUAE最大のソブリンAI LLM開発機関であり、MBZUAIがこれに続きます。一方、イランは現在のところ適応型モデルを中心に開発を進めています。今後は、カタールのFanar 3.0(2026年12月公開予定)、イラク政府主導のソブリンLLM、オマーンMTCITによる国家LLM「Mu’een」の拡張計画など、中東全体でソブリンLLM開発がさらに活発化する見込みです。また、クウェート、ヨルダン、バーレーンは現在、国家戦略の策定段階にあります。
アジア太平洋地域(APAC)
韓国、日本、インドがAPACのソブリンAI LLMをけん引しています。インドはSarvam 105Bによってスペクトラム最上位グループ入りを果たしました。官民連携(PPP)による開発体制が、ソブリン性の評価を押し上げています。一方、日本と韓国は充実した開発エコシステムを持つものの、オーナーシップに関する評価で一定の減点を受けています。韓国は地域内の17%と最も多くの基盤LLMを保有し、日本は11%でこれに続いています。日本ではGENIAC支援の下、Preferred Networks、NTT、SoftBank、楽天などが開発を進めています。韓国ではMSITの支援を受け、LG AI Research、SK Telecom、NAVERなどが政府支援型の民間主導体制で開発を進めています。
中・東欧
ロシアは規模・性能ともに地域をリードしています。地域全体では適応型モデルへの依存が大きいものの、学術基盤は充実しています。ロシアは地域全体のソブリンLLMの30%を占め、7020億パラメータのGigaChat 3.1 Ultraを擁しています。また、トルコもソブリンモデル比率16%で有力なプレーヤーとして存在感を高めています。
西欧
西欧では地域全体の59%が基盤モデルで構成されており、高いソブリンAI開発能力を示しています。Mistral AIを擁するフランスが地域をリードしており、公的オーナーシップを基盤としたAIコンソーシアムや学術・研究機関が開発を支えています。
中央アジア・アフリカ
両地域では約80%が適応型モデルとなっています。エジプトとカザフスタンは政府投資と消費者向けサービス展開を背景に地域をリードしています。中央アジアではまだ独自の基盤LLMは誕生しておらず、適応型モデルへの依存が続いています。アフリカでも基盤LLMは限定的で、主要な開発国はエジプトと南アフリカです。
北米(カナダ)
カナダではAI企業CohereがソブリンAIを支えており、Tiny Aya(33.5億パラメータのSLM)とCommand A(1110億パラメータのフロンティアモデル)の2つの基盤LLMを開発しています。
中南米(CALA)
中南米のソブリンAI LLMは、実質的にチリとブラジルが中心となっています。地域内の多くの国は調査対象外でしたが、チリとブラジルはいずれも米国のLlamaをベースとした適応型モデルを開発しています。
本プレスリリースに関する詳細並びに情報は、こちらからご覧いただけます。
https://japan.counterpointresearch.com/coverage/ai-tracker-forecast-report/
*本プレスリリースは2026年7月30日に発表されたプレスリリースの日本語版です。原文はこちらをご参照ください。
https://counterpointresearch.com/en/insights/middle-east-leads-sovereign-ai-llm-race-in-h1-2026
【カウンターポイントリサーチ概要】
テクノロジーエコシステム全体にわたる製品を専門とするグローバル市場調査会社です。世界の主要なイノベーションハブ、製造クラスター、商業センターに拠点を構え、スマートフォンOEM、チップメーカー、チャネル企業、大手テクノロジー企業など、幅広いクライアント様にサービスを提供しています。経験豊富な専門家が率いる当社のアナリストチームは、経営幹部から戦略、アナリストリレーション(AR)、市場情報(MI)、ビジネスインテリジェンス(BI)、製品・マーケティングの各分野のプロフェッショナルまで、企業全体のステークホルダーと連携し、市場データ、業界のソートリーダーシップ、コンサルティングといった幅広いサービスを提供しています。
主な調査領域には、AI、自動車、コンシューマーエレクトロニクス、ディスプレイ、eSIM、IoT、位置情報プラットフォーム、マクロ経済、製造、ネットワークおよびインフラ、半導体、スマートフォン、ウェアラブルを含みます。カウンターポイントリサーチの注力領域、アナリスト、対話の機会等におかれましては、Insightsページより一般公開市場データやインサイトをご確認ください。
公式ウェブサイト: https://japan.counterpointresearch.com/