• 2023年第3四半期の世界のスマホ売上は前年同期比で横ばい。1,000億ドル(約15兆円)をわずかに超えたレベル。
  • Appleは世界のスマホ市場をリードしている。第3四半期の売上額、売上に占めるシェア、ともに過去最高を記録した。
  • 出荷台数ベースのシェアで首位のSamsungは、売上ベースでは第2位で、そのシェアは18%であった。
  • 出荷が伸びたことで、XiaomiHONORHuaweiなどの中国メーカーは売り上げも伸びている。

 

2023年第3四半期の世界のスマホ市場における売上は、前四半期比では15%伸びたものの、前年同期比では横ばいで1,000億ドル(約15兆円)をわずかに超えた金額であった。Appleは市場の首位で、世界のスマホ売上の43%を獲得した。これは第3四半期(7月~9月)として過去最高である。Appleの最新機種iPhone 15シリーズの発売は、昨年同時期に発売された前の機種と比べて、一週間遅かった。それにもかかわらずこの結果である。

 

市場動向について、シニアアナリストのHarmeet Singh Waliaは以下のようにコメントした。

「iPhone 15シリーズの中では、Pro Maxが最も売れている派生機種であり、第3四半期にAppleが営業利益に置いても過去最高を記録するのに貢献した。しかし、世界のスマホ市場における同社の営業利益率のシェアは特に増えたわけではなく、横ばいである。これはHuaweiとHONORが復活したことと、XiaomiやOPPOなど他の中国メーカーも利益率を重視し始めたことが、理由である。結果として、世界のスマホの営業利益率は高止まりしており、出荷台数が伸びないコロナ後の状況に市場が対応していることを、如実に表している。」

 

SamsungのASP(平均売価)は前年同期比4%増加した。新発売のFold 5が好調なことと、S23シリーズが勢いを維持していること、それに商品ラインナップの中でフラグシップ機種のシェアが高くなっていることが理由である。しかし、この期間の出荷は8%落ち込んでASPの上昇を打ち消してしまい、結果としてSamsungの売上は前年同期比で4%減少した。

 

OPPOは、折り畳み型などASPが高額な商品に重点をおき、例えばN2 Flipは中国ではベストセラー機種になり利益貢献している。それでも中国国外への展開、特にインドへの展開が遅く、出荷ベースでは前年同期比割れとなっている。このため、2023年に入ってからの3四半期のOPPOのスマホ売上は、コロナ後の最低となった。また、vivoは、利益は計上できているものの、本国である中国での競争はさらに厳しい。HONORやXiaomiと比べ、同社の販促プロモーションはアグレッシブさで負けている。結果として、vivoの第3四半期の売上は前年同期比12%の減少、2年前の2021年第3四半期と比べるとほぼ半減した。

 

Xiaomiはスマホのトップ5社のうち、唯一出荷が前四半期比でも前年同期比でも伸びたメーカーである。同社が中国やインドで地位を強固にしたこと、中位価格帯の値ごろな商品をキャンペーン価格で小売店や消費者に供給したこと、それにRedmi KとNoteシリーズが好調だったこと、がこの結果につながった。同社は、売上と営業利益においても、前四半期比・前年同期比ともに成長した。

 

リサーチディレクターのJeff Fieldhackは以下のようにコメントした。

「中国のスマホ市場はこの四半期に約3%減少したとCounterpoint Researchでは推定している。そのなかでAppleの中国売上は2.5%の減少であった。Huawei 5G機種との競争が激化していることを考えれば、これはAppleとiPhone 15にとってむしろ良いニュースと言える。Pro MaxとProの供給が限られていたことを考えればなおさらである。」

 

iPhone 15シリーズのインパクトがどれくらい大きいのかは、世界中が歳末シーズンになりiPhone 11や12のユーザーが買い替えを加速させるまで、見通すのは難しい。発売当初の四半期におけるiPhoneの最新機種の売れ行きは、中国においては昨年を下回ったが、これは祝祭シーズンまでの期間が短かったことと、Pro Maxの供給ミスマッチとが、影響したものである。今年最後の四半期にはこの状況は改善しそうだ。11.11(中国の独身の日)で売り上げが大きく伸びるだろう。中国の他のメーカーにとっても好機である。インドでは祝祭シーズンの期間が延び、世界第2位の巨大市場である同国で出荷と売り上げが両方とも成長した。インドでは積みあがった需要の存在と、5Gへのアップグレード需要も、成長を後押しした。全体として、世界のスマホ市場は、例年のように最後の四半期で持ち直して、成長で終えられそうである。

 

 

Team Counterpoint

Counterpoint Researchは若く急成長中の調査会社で、ハイテク業界の分析を得意としている。カバーする領域は、コネクテッド機器、消費者向けデジタル製品、ソフトウェアとアプリケーション、および関連分野のトピックスである。当社の調査チームがまとめて発行するレポートに加え、要望に合わせてカスタマイズしたレポートも提供している。また、セミナーやワークショップを企業向けに開催して好評を得ており、依頼があれば実施している。特に高精度の調査を必要とするプロジェクト向けには、コンサルティングやカスタマイズした調査活動も実施する。