• GenAI(生成AI)を搭載したスマホが、スマホ出荷全体に占める割合は、2024年に11%、2027年には43%になるとみられる。
  • これらの予測値は、今年後半にAppleがこのカテゴリに参入するとの期待感から、Counterpoint202312月に公表した数値よりも高くなっている。
  • このジャンルで先陣を切ったSamsungが2024年のGenAIスマホのランキングで首位になるだろう。一方、Appleは2025年の首位になりそうである。
  • Qualcommは、2024年におけるAI SoCの首位で、GenAIスマホ出荷全体のほぼ半分を獲得している。MediaTekが13%のシェアでこれに続いている。
  • 主に二つの価格帯に収束しつつある。600米ドル(約9万円)超と、400~599米ドル(約6~9万円)である。これまで2024年に販売されたスマホの9割が、これらの価格帯である。

 

Counterpoint Researchが提供するSmartphone 360 Serviceの一部として近く発行する ’GenAI Smartphone Shipments and Insights’ によれば、GenAIスマホのスマホ出荷全体に対するシェアは2024年に11%に達し、さらに2027年には43%、台数では5.5億台を突破するとみられる。4倍を超える成長である。2027年にはGenAIスマホのインストールベースは10億を超えると予想される。今年後半にAppleがこのセグメントに参入すると予想されるなか、この予測値はCounterpointが2023年12月に発表したものより高い数字になっている。

 

Counterpoint ResearchではGenAIスマホを、大規模な事前学習済みAIモデルを持ちしてオリジナルなコンテンツを生成したり、状況に応じたタスクを実行したりすることができる、携帯機器、と定義している。当社では、こうした機器が、マルチモーダルな入力、例えばテキスト、画像、音声などを処理して、多様な出力を生成することで、自然でシームレスなユーザー体験を与えるようになると考えている。こうした機器のハードウェア性能は、技術の進化に伴って向上していくだろう。しかし、現状では、生成AIのモデルを動作させるには、現在のフラグシップスマホと同等かそれ以上の性能が必要である。

 

リサーチディレクターのTarun Pathakは以下のように述べた。

「これまでに10を超えるスマホメーカーが、30を超えるGenAI搭載スマホを発売している。AI搭載スマホは、年初以来大事なセールスポイントになっている。特に、SamsungがGalaxy S24シリーズのデビューを成功させ、AIのユースケースに対して良い評判を得られて以降、各社はAIを推すようになった。2024年は、このままSamsungがGenAIをリードすると見られる。Samsungが先行者利益を享受するのは、ここ数年で2回目である。1回目は折り畳み型の成功であった。今後数年にわたってGenAIの機能がより広く認知されるにつれ、AIにおける現在の優位性を活かして、中位~高級スマホのセグメントでのSamsungの勢いが続くだろう。」

 

Pathak氏はさらに以下のように続けた。

「Samsung以外では、期待されているAppleの参入が、このセグメントの成長をさらに加速することになる。そして、ひとたびAppleが参入すれば、2025年以降に発売される中位~高級スマホにとってAIは必須の機能になる。もっとも、真の差別化はユースケースである。消費者は、自分が将来買う端末にAIがどんな潜在的な影響を与えるか、まだ見定めているからである。」

 

出典:Counterpoint Research Smartphone 360 Service, GenAI Smartphone Shipments and Insights Report

 

アソシエイトディレクターのMohit Agrawalは以下のように述べた。

「将来のスマホは、各自のニーズや好みに応じる、よりパーソナライズされた機器になる。そして、パーソナライズされた体験を提供する上で、AIは中心的な役割を果たすことになる。メーカー各社はAIに関するポジショニングで違いを出そうとしており、その鍵はAIのユースケースである。今のところ、ユースケースとしては、画像加工の高度化翻訳機能アプリの体験の改善、コンテンツのリコメンド、よりその人に合わせたコンテンツの生成などがある。こうしたユースケースは、大規模言語モデル(LLM)が規模と性能において成長するとともに、進化していくだろう。Counterpointでは、エッジ機器(携帯機器)とクラウドの統合が、スマホにおける生成AIの基本的なアーキテクチャになるとみている。そして、メーカーの中で、ハードだけでなくソフトにおいても強みを持ち、戦略的なパートナーシップを業界内で構築できる企業が、競争の中で一歩抜きんでるだろう。」

 

今後については、GenAIスマホは2025年に変曲点を迎えると予想される。この時期に搭載機器の価格帯が広がるからである。特に400~599米ドル(約6~9万円)の価格帯への展開が重要になる。2024年末には、600米ドル超(約9万円超)と400~599米ドルがGenAIスマホの9割を占めるだろう。MediaTekQualcommなどの主要チップセットメーカーはすでに生成AIスマホへの対応で先行している。各社はマルチモーダルな大規模AIモデルを端末で実行できるようなモバイル向けコンピューティングプラットフォームを発売している。2024年のAI SoCはQualcommがリードし、GenAIスマホの出荷のほぼ半分を獲得している。これに次ぐのがMediaTekで、13%のシェアである。

 

 

Team Counterpoint

Counterpoint Researchは若く急成長中の調査会社で、ハイテク業界の分析を得意としている。カバーする領域は、コネクテッド機器、消費者向けデジタル製品、ソフトウェアとアプリケーション、および関連分野のトピックスである。当社の調査チームがまとめて発行するレポートに加え、要望に合わせてカスタマイズしたレポートも提供している。また、セミナーやワークショップを企業向けに開催して好評を得ており、依頼があれば実施している。特に高精度の調査を必要とするプロジェクト向けには、コンサルティングやカスタマイズした調査活動も実施する。