MWCバルセロナ 2025が開幕しました。カウンターポイントリサーチのアナリストが現地を訪問し、主要な発表を追跡。テクノロジー業界への幅広い影響をレポートします。イベント初日のハイライトは次のとおりです。

 

HONORがAIへ100億ドルを投資

HONORは、今後5年間でAI開発に100億ドルを投じるという長期投資計画の概要を発表しました。開発した技術を自社のデバイスエコシステムに統合していきます。同社は、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、業界パートナーシップのための共同AIフレームワークの構築を目指しています。この動向は、AIが消費者向け端末における差別化要因の中核になりつつあるという、業界のトレンドと一致しています。

カウンターポイントからのアドバイス:

中国のアプリエコシステムは、世界の他の地域とはかなり異なっています。HONORが抱く世界展開を進めるには、スマートフォンAIエコシステムを推進しているGoogleやQualcommなどの主要プレーヤーと緊密なパートナーシップを築き、実質的なユースケースを作り出すことだと考えられます。エージェントAIのビジョンは、オープンとコラボレーションを通じてのみ、地域を超えて実現できます。このようなパートナーシップは、HONORがオープンでグローバルなブランドとしての地位を確立するのにも役立つと考えられます。

出典: HONOR

Xiaomi 15 Ultra: カメラ優先のフラッグシップモデル

Xiaomiは、これまで中国限定で発売していたXiaomi 15 Ultraを世界に向けて発売すると発表しました。このスマートフォンはQualcomm社 Snapdragon 8 Eliteチップセットを搭載し、最大16GBのRAM、LTPO(低温多結晶酸化物)AMOLEDディスプレイ、90Wの急速充電機能を備えています。

際立っているのは、高級カメラブランド ライカと共同開発したクアッドカメラシステムです。50MPのプライマリーセンサー、50MPの超広角カメラ、3倍光学ズームの50MP望遠レンズ、4.3倍光学ズームの200MPペリスコープ(潜望鏡)望遠カメラのシステムを搭載しています。光学式手ぶれ補正(OIS)とAI駆動の強化により、この端末はプレミアムスマートフォンセグメントの強力な競争相手としての地位を確立しています。

カウンターポイントからのアドバイス:

Xiaomi 15シリーズは14シリーズよりも好調な業績を上げており、2024年第4四半期に中国ハイエンド市場で第3位のOEMとなりました。自動車分野への参入により、同社のブランドイメージはプレミアムなものとなり、この傾向は世界市場に展開されると考えています。しかし、Xiaomi 15の価格は999ユーロ(約1,047ドル、約157,000円)、Xiaomi 15 Ultraの価格は1,499ユーロ(約1,600ドル、約240,000円)であり、同社は世界のハイエンド大手であるAppleやSamsungと直接競合しています。さらに、OPPOやHONORなど他の中国OEMもシェアを争っており、ハイエンド市場は競争が激しく、参入が困難な市場となっています。また、Xiaomiにとって、消費者は購買意欲の高い西ヨーロッパが中国に次ぐ有力ターゲット地域の1つとなっています。

出典: Xiaomi

Samsungがミッドレンジ Galaxy AシリズにAIを導入

Samsungは、主力モデル以外にもAI機能搭載を広げています。新しいGalaxy A56 5G、A36 5G、A26 5Gには、AI を活用した写真編集、文章作成支援、GoogleのCircle to Searchが搭載され、より幅広いユーザーに高度なAI機能を提供します。

カウンターポイントのアドバイス:

Samsungは、最新のA シリーズで、価格帯を問わず、できるだけ多くの最新機種にGalaxy AI機能を搭載するという戦略を続けています。価格帯は、300ドル(A26, 約45,000円) から500 ドル(A56, 約75,000円) まで取り揃えています。これまでのところ、Samsungは生成AIの先行者としての優位性を享受していますが、ブランドが収益化について考える前に、消費者をどれだけうまく大規模なユースケースに引き込むことができるかた本当の試金石になると考えています。

出典: Samsung

TCLが目に優しい画面を搭載したNXTPAPER 4.0を

TCLは、最新のNXTPAPERテクノロジーを搭載した、60 XE NxtpaperスマートフォンとNxtpaper 11 Plusタブレットで発表しました。紙のような画面を搭載し、目の疲れを軽減するほか、長時間の読書に適したモノクロモードも備えています。従来のLCDやOLEDディスプレイに代わるニーズに応えた仕様となっています。

カウンターポイントのアドバイス:

TCLは、MWCバルセロナでTCL 60 SE NXTPAPER 5G、60 NXTPAPER、60R 5G、TCL 60 5G、TCL 60 SE、TCL 605を発表し、60シリーズを拡充しました。これらの端末は、1月のCES2025で発表されたTCL 60 XE NXTPAPER 5Gの拡張となります。TCLは、特定の機能でさまざまな市場をターゲットにしています。TCL 60R 5GやTCL 60 5Gなどの一部の端末は、120Hzのリフレッシュレートを備えた6.7インチディスプレイを備えている一方で、TCL 60 SEやTCL 605には50MPハイブリッドカメラを搭載し写真撮影に重点を置いています。TCL 60 SE NXTPAPER 5Gは、AI翻訳、AI要約、AIライティングアシスタンスなどのAIツールを備えた最初の端末です。このような差別化により、TCLはターゲットとするさまざまな市場、特にOEMの競争が激しい300 ドル未満の市場で頭角を現すと考えています。

出典: TCL

HMDがフィチャフォンでFCバルセロナとコラボレション ポトフォリオを

HMD Globalは、ウェルビーイングとノスタルジ-を重視したデザインの4つの新しい携帯電話を発表しました。ラインナップには、長寿命バッテリーとFMラジオ機能を求めるユーザーを対象としたHMD 130とHMD 150 Musicという2つのフィーチャーフォンが含まれています。

同社はまた、FCバルセロナブランドのスマートフォン、HMD Barça 3210とHMD Barça Fusionの二機種も発表しました。後者はコレクターズ向けの端末で、 スター選手11人のサインが刻印されているほか、選手の声をアラームとして設定するオプションなど、ファン向けの特典も付いています。さらに、Fusion X1スマートフォンには、Xploraサブスクリプションによるペアレンタルコントロール機能が搭載されており、位置追跡、インターネット制限、緊急SOS機能などを提供しています。

カウンターポイントのアドバイス:

HMDは過去にハイネケンやバービーとも提携していましたが、今はFCバルセロナやXploraと提携しています。ほとんどのOEMがAIの波に乗っている一方で、HMDはパートナーシップを活用してニッチ市場を創出し、競争の激しいスマートフォン分野で差別化を図っています。

出典: HMD 

HMD、多目的充電ケース付きAmped Budsを発表

HMDは、アクティブ ノイズ キャンセル(ANC)、環境ノイズ キャンセル(ENC)、イコライザー(EQ)コントロールを備えたTWS(ワイヤレスイヤホン)のAmped Budsでオーディオカテゴリーにも進出しました。TWSには、ワイヤレスモバイルバッテリーとしても機能する充電ケースが付属しており、TWSの充電以外にもさまざまな機能を提供ししています。ケースにはUSB Type-Cポートが付属しており、コンシューマーエレクトロニクス分野での、多機能アクセサリのトレンドがさらに強まっていると見ることができます。

カウンターポイントのアドバイス:

HMDのAmped Budsは、機能的イノベーションへ注力しています。モバイルバッテリーとしても機能する充電ケースはユーザーの魅力を高め、同様な多目的設計はすぐに業界標準になるかもしれません。

出典: HMD

realme、交換レンズ搭載スマトフォンレンズを実験的に発表

realme は、デジタル一眼レフカメラ用レンズを直接取り付けることができる、交換レンズシステムを備えたプロトタイプのスマートフォンをデモ展示しました。同社はまた、将来のrealmeスマートフォンに展開される予定のAI搭載の画像処理機能もプレビューしています。

カウンターポイントのアドバイス:

スマートフォンのカメラの機能は長年にわたり着実に向上し、プロ仕様になりつつあります。また、スマートフォンは、ほとんどの人にとって写真や動画を撮影するために用いる端末になっています。カウンターポイントリサーチの「Global Handset Tracker」では、スマートフォンに搭載されているメインカメラの平均解像度は2024年に54MPに達しています。この交換レンズのコンセプトによって、realmeはスマートフォンとプロ用カメラの境界線をさらに曖昧にしました。ただし、これは完全に新規なコンセプトではありません。Xiaomiが2022年に12S Ultraで同様のコンセプトを披露しています。

出典: realme

MediaTekの6Gビジョンとハイブリッド・コンピュティングのアプロ

MediaTekは、M90 5G-Advancedモデムや6Gの初期研究など、次世代接続技術を展示しました。同社は、端末、クラウド、ネットワークリソースを統合して生成AIなどのアプリケーションの遅延を減らすハイブリッド・コンピューティングに取り組んでいます。MediaTekは、NVIDIA、Intel、G REIGNS と協力して、この機能をさらに探求しています。

カウンターポイントのアドバイス:

MediaTekは、ハイブリッド・コンピューティングの開発でNVIDIA、Intel、G REIGNS と提携しています。このシステムは、端末・クラウドと無線アクセスネットワーク(RAN)を「エッジ・クラウド」に統合します。これは、6Gインフラストラクチャの重要なポイントです。6Gへの競争は、MediaTekとQualcommの両社が技術の優位性を競い合う中で、激化しています。これ以外にも5Gアドバンスモデム R18以降の開発、5G NTN、エッジでのデバイス内 GenAI 実装といった重要なテーマがあります。

出典: MediaTek

QualcommがDragonwingでエンタプライズ分野に進出

Qualcommは、エンタープライズソリューションに重点を置き、Snapdragonとは異なるDragonwingという新しいサブブランドを導入しました。同社は、40TOPSエッジAI、12.5Gbps、AI駆動のトラフィック分類を備えたDragonwing FWA Gen 4 Eliteを発表しました。また、Snadragon 8 Eliteチップセットを搭載した端末上のAI機能のプレビューも行いました。これには、メッセージング、ナビゲーション、アプリ間のやり取りなどのタスクを自動的にAI駆動する機能が含まれます。スマートフォンインテリジェンスの基本レイヤーとして端末上のAIを推進し、クラウド処理への依存を減らしながらユーザーの自律性とアプリ間の機能を強化するQualcommの取り組みを示しています。

カウンターポイントのアドバイス:

QualcommのDragonwing は、ビジネス顧客をターゲットにした新しいブランドによるエンタープライズへの戦略的転換です。Snapdragonでは、引き続きコンシューマーセグメントに重点が置き、この個別のブランド化により、エンタープライズとコンシューマーセグメントに合わせた製品とマーケティングのアプローチを可能とします。

一方、パーソナル・ナレッジ・グラフを搭載した端末上のAIエージェントは、リアルタイムでの端末の自律操作を可能にします。これにより、プライバシー、低レイテンシ、クラウドの必要性の制限、充実したユーザーエクスペリエンスが保証されます。

出典: Qualcomm

レノボのフレキシブルな太陽光電ノトパソコン

レノボは、最大18.1インチまで拡張可能な13インチの巻き取り式OLEDディスプレイを搭載したFlip AI PCなど、さまざまな新しいコンピューター製品を発表しました。また、レノボのYoga Solar PCは太陽光発電による充電を統合しており、わずか20分の充電で1時間のビデオ再生が可能です。さらに、ThinkBook 16p Gen 6はモジュール式のディスプレイ・アクセサリとAI搭載のダッシュボードを備えており、レノボの適応性とエネルギー効率に優れたコンピューターランナップを強化しています。

カウンターポイントのアドバイス:

レノボのFlip AI PCは、より多用途なコンピューティング・エクスペリエンスへの展開を象徴しています。高価格が一部のユーザーを躊躇させるかもしれませんが、フレキシブルなOLEDディスプレイとマルチモードの使いやすさは、将来のノートPCのイノベーションのベンチマークになると考えています。

出典: レノボ

MWC Barcelona 2025レポートの今後のアップデートにご注目ください。