- Ray-Ban Metaスマートグラスの強い需要に牽引され、世界のスマートグラスの出荷量は、2023年に前年比156%、2024年には前年比210%に急成長しました。
- Ray-Ban Metaスマートグラスは、ウェアラブルAIを統合し、スタイリッシュなデザインと強化されたスマート機能を組み合わせることで、スマートグラスの位置づけを再定義しています。
- Ray-Ban Metaスマートグラスの成功にきっかけとして、Xiaomi、Samsung、Baidu、ByteDanceなどの大手テクノロジー企業を含む多くの新規プレーヤーが、世界のスマートグラス市場に参入する予定です。2025年は「数百のスマートグラスの戦い」になると予想しています。
- カウンターポイントリサーチ社は、より多くのユースケース、幅広い価格帯、拡大するプレーヤーエコシステムにより、世界のスマートグラス市場が2025年に前年比60%増の成長を遂げ、2029年まで60%以上のCAGRを維持して成長すると予想しています。
当社の「Global Smart Glasses Model Shipments Tracker」では、Ray-Ban Metaスマートグラスの強い需要に牽引され、2024年の世界のスマートグラスの出荷数量は、前年比210%増となり、初めて200万台を突破し、前例に見ない成長を記録しました。
世界のスマートグラスの出荷数量、2024年 vs 2023年
出典: カウンターポイント Global Smart Glasses Model Shipments Tracker、2025年1月
*注:この調査では、シースルーディスプレイと光学部品のないスマートグラスのみを含み、ARグラスを除外しています。
カウンターポイントリサーチ社は、スマートグラスを、従来型のメガネに電子部品を統合し、標準的なメガネを超えた「スマート」機能を提供するウェアラブル・コンピュータ端末と定義しています。広義では、このような機能を組み込んだメガネはすべてスマートグラスに該当しますが、狭義では、「スマートグラス」という用語は、AR端末を除くために使用されることが多く、AR端末は ARグラスとして別途分類されています。当社のレポートでは、スマートグラスとは、シースルーディスプレイや光学システムのないメガネのみを指しています。
また、AIスマートグラスはスマートグラスのサブカテゴリであり、AI技術を組み込んで強化された機能と、よりインテリジェントでインタラクティブなユーザーエクスペリエンスを実現します。当社の定義では、端末がAIスマートグラスとは、次の基準を満たす必要があるとしています:
- AI対応プロセッサ搭載: ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)、データ・プロセッシング・ユニット(DPU)、その他のAIアクセラレータなど、AIタスクを処理するための専用ユニットを備えたコンピューティング・プロセッサを搭載している必要があります。これによって、メガネは小さなAIモデルを動作させ、音声アシスタントやデータの前処理などの基本的なAIタスクを端末上で実行できます。クラウドAIやスマートフォンなどのコンパニオン端末によるAIに依存する端末は、当社定義でAIスマートグラスに含んでおりません。
- 音声インターフェース: ユーザーと端末間の自然でシームレスな会話を可能にするために、スピーカーとマイクが装備されている必要があります。
- 視覚AIアシスト: ユーザーの周囲を「見る」ためのカメラを搭載し、視覚入力処理や、画像認識やコンテキスト理解などのAIサポート機能を可能にする必要があります。
- 高速かつ安定したワイヤレス接続を備えている必要があります。
AIスマートグラスでは、大きさ、搭載バッテリー、放熱の制約により、ほとんどのAIワークロード(大規模AIモデルの実行など)は、クラウドやスマートフォンなどのコンパニオン端末で処理されます。AIスマートグラス上のAIは、主にノイズ低減、音声アシスタントの起動(トリガー音声)、簡単なコマンドなどの基本的なタスクをサポートします。端末上のAI機能は限られていますが、「AIグラス」として認められるためには不可欠であり、AI機能のためにクラウドやコンパニオン端末に完全に依存するベーシックなスマートグラスとは区別をしています。
機能の進化: ベーシックメガネ vs スマートオーディオグラス vs AI スマートグラス
出典: カウンターポイント Global Smart Glasses Ecosystem & Market Trends、2025年 1 月
Ray-Ban Metaスマートグラスが世界のスマートグラス市場の成長を促進
当社の定義では、 Ray-Ban Metaスマートグラスが市場初のAIスマートグラスとなります。NPU統合型SoC、高性能なカメラやオーディオ部品を実装しています。これらの技術により、写真/ビデオのキャプチャやオーディオ再生などのスマートな中核機能が可能となり、端末上のAIアルゴリズム、スマートフォンと連携したエッジAI、Llama AIモデルを活用した幅広いアプリケーションがサポートされています。
Ray-Ban Metaスマートグラスは、その位置づけとユーザーエクスペリエンスの両面で AIスマートグラスを再定義するものであると考えています。初期のスマートグラスでは、音漏れ、音声の聞き取りの不正確さ、着用時間の制限などの課題に対処するため、主に接続性、音質、バッテリー寿命などのハードウェア改善に重点を置いていました。音声アシスタント機能のアップグレードもなされましたが、ユーザーエクスペリエンスを根本的に変えることはありませんでした。
Ray-Ban Metaスマートグラスの発売後、スマートグラスの世界的な需要が急増しました。カウンターポイントリサーチ社のGlobal Smart Glasses Model Shipments Trackerでは、世界のスマートグラスの出荷量は2023年に前年比156%増、2024年には前年比210%増となり、2024年にはMetaだけで市場シェアの60%以上をっ占めると予想しています。
Ray-Ban Metaスマートグラスの成功を受けて、そのサプライチェーンに属する企業によるリファレンスデザイン製品からOEMによる商品化製品に至るまで、2024年後半から新しいAIスマートグラスの波が来ています。2025年1月末までに、主に中国を拠点とする企業から9種類以上の新しいAIスマートグラスモデルが登場し、Metaを追いかけて新興市場のチャンスを活かそうとする積極的な動きが見られました。代表的な製品として、Baidu Xiaodu AIグラス、Loomo AIグラス、RayNeo V3 AIカメラグラス、 LOOKTECH AIグラスなどあります。これらのブランドは、特にバッテリー寿命、写真/ビデオの機能、重さで、Ray-Ban Metaスマートグラスよりも改善されていることを強調した製品の位置付けをおこなっています。
2025年には、Xiaomi、Samsung、Transsionなどのスマートフォン大手から最初のAIスマートグラスが登場すると予想しており、2025年から2026年にかけてさらに多くの企業が市場に参入する可能性があります。2025年は「何百ものスマートグラスの戦争」になると予想しています。
世界のスマートグラス市場における競争環境の進化 ~ 主なプレーヤーグループ
出典: カウンターポイント Global Smart Glasses Ecosystem & Market Trends、2025年 1 月
市場競争が激化する中、誰もが認める市場リーダーとなったMetaが、2025年以降もスマートグラス事業においてより積極的な拡大戦略を追求すると、当社は予想しています。Meta社は、製品ポートフォリオを拡大することでこれを実現するでしょう。他の主要企業も製品発売計画を加速させていることから、世界のスマートグラス市場は今後繁栄し、2025年には前年比60%増の成長を達成し、2029年まで60%を超えるCAGRを維持すると予想しています。
2019年~2029年(予測)世界のスマートグラス市場の出荷量と前年比成長率(%)
*注: この調査では、シースルーディスプレイと光学部品のないスマートグラスのみを含み、ARグラスを除外しています。
一方、サプライヤーからの市場見通しは楽観的ですが、AIスマートグラス・エコシステムに関する当社の分析では、市場参入障壁は比較的低いものの、成功を達成するのは容易ではないと考えています。北米市場でのRay-Ban Metaの成功を、特にアジア市場において、他の企業が再現できるとは限りません。さらに、ほとんどのAIスマートグラスは主要部品メーカーからの標準化された部品に依存すると考えられるため、差別化が困難であると同時に長期的な成功のためには不可欠となります。
競争力を維持するために、この業界のプレイヤーは、Ray-Ban Metaスマートグラスの主要な成功要因から学ぶだけでなく、進化するテクノロジーエコシステムと市場の動向を深く理解する必要があります。
市場の進化、競争環境、Ray-Ban Metaスマートグラスのケーススタディ、テクノロジエコシステムとサプライチェーン、当社の市場予測に関する包括的な分析については、このリンクから Global Smart Glasses Ecosystem & Market Trends レポートへアクセスし、ご参照のほど、お願い致します。
【カウンターポイントリサーチ社概要】
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